SEASON 2 / CASE 024 / 賞金 MEMORY 11回収
隕石が宇宙を旅した時間は分かる? CASE 024「落ちる前にできた傷」
この記事のもくじ(12項目)
まずは、かんたんな答えから
隕石が宇宙を旅した時間、かんたんに言うと
この隕石は、どれくらいの時間を宇宙で旅してきたのでしょうか。
宇宙には、とても速い粒がとびかっています。石がそれをあびると、中に新しい成分が少しずつたまります。たまる速さは分かっています。だから、たまった量から旅した時間を計算できます。
ただし、注意がいります。大きな石のおくにかくれていたあいだは、粒があまり当たりません。とちゅうで石がくだけて、新しい面が出ることもあります。
だから三つの時間を分けて読みます。生まれた時。宇宙を旅した時間。地球に落ちてからの時間です。
つまり隕石は、宇宙を旅した時間そのものを覚えているわけではありません。あびた粒の量から、あとで読みとるのです。
この記事に出てくるナイトジャー号、CLOCK 14は、STAR WARRANT の物語です。宇宙線照射年代、宇宙線生成核種についての説明は、実際の観測と研究にもとづいています。
傷は、落下より先にできていた。
三百十二年前。
水素リッチ投下物は、ノクス・セブンの大気へ入り、表面を融かしながら地下へ落ちた。
そのとき外側には、急冷した金属ガラスの殻ができた。
CASE 023で保存した十四粒子のうち、六番粒子。
金属殻の内側に、古い破断面がある。
その破断面から、
- 宇宙線による格子損傷
- 宇宙線生成ネオン
- 宇宙線生成ヘリウム
- 放射性のベリリウム・アルミニウム・塩素に相当する核種
が検出された。
外気圏へ落下したとき、その面は金属殻の内側に閉じ込められている。
大気突入後に宇宙線にさらされた面ではない。
それでも照射記録は、
43 YEARS OF OPEN-SPACE EXPOSURE
を示していた。
破断面は、ノクスへ落ちる四十三年前には、すでに宇宙空間へ開いていた。
さらに中心部には、もっと長い照射記録。
12,400 YEARS
CLOCK 14は二つを合計する。
TOTAL TRAVEL TIME:12,443 YEARS
LAUNCH DATE:12,755 YEARS AGO
しかし外側の一部は12,400年。
内部の破断面は43年。
最深部には、ほとんど宇宙線生成核種がない。
すべて同じ物体が同じ時間を旅したなら、なぜ場所ごとに「旅の長さ」が違うのか。
第十一記憶室では、十四個の複合粒子が巨大な球形遮蔽容器へ移されていた。
CLOCK 14は、遮蔽の違いを誤差として消すため、粒子を高速中性子・高エネルギー陽子で均一に照射しようとしている。
EXPOSURE HOMOGENIZATION:00:22:00
二十二分後。
すべての場所が同じ宇宙線量を持ち、
一万二千四百四十三年間、同じ大きさで旅した物体
という一つの履歴に統合される。
しかし宇宙線生成核種の深さ分布こそ、母天体からいつ、何段階で割れたかを示す証拠だった。
先に結論:宇宙線照射年代は「石の年齢」ではなく、宇宙線にさらされた履歴を測る
高エネルギーの宇宙線が岩石へ入ると、鉱物中の原子核と反応します。
原子核から陽子や中性子などがはじき出され、別の核種が作られることがあります。
このような反応を核破砕反応、生成された核種を宇宙線生成核種または宇宙線起源核種と呼びます。
隕石研究では、
- ³He
- ²¹Ne
- ³⁸Ar
- ¹⁰Be
- ²⁶Al
- ³⁶Cl
などが使われます。
単純な露出履歴で、生成速度が分かっている場合、
宇宙線生成核種の蓄積量 ÷ 生成速度
から、宇宙線にさらされていた時間を推定できます。
NASAの隕石試料分析施設でも、Ar・Kr・Neなどの宇宙線照射年代は、隕石が母天体から放出された時期を理解するために使われています。[参考1]
ただし、得られるのは、
- 鉱物が最初に形成された年代
- 太陽系が形成された年代
- 惑星へ落下した年代
ではありません。
主に、
母天体や大きな岩石から分離し、宇宙線が届く小さな物体として存在した期間
を反映します。
さらに岩石が、
- 母天体表面で一度さらされる
- 地下へ埋まる
- 衝突で小片になる
- 宇宙を飛ぶ
- 惑星表面へ落ちる
という履歴を持てば、複数の照射期間が重なることがあります。
月由来の隕石などでは、月面や浅い地下での照射と、月から放出された後の宇宙飛行という複雑な照射履歴が研究されています。[参考5]
今回も、
一万二千四百年の第一露出
大きな母片内部での遮蔽
四十三年の第二露出
三百十二年前のノクスへの落下
という複数段階でした。
CLOCK 14が足し算した一万二千四百四十三年は、連続した一回の旅ではありません。
宇宙線は、岩石のどこまで届く?
宇宙線の影響は、表面からの深さで変わります。
高エネルギー粒子は岩石へ入り、二次粒子のシャワーを作ります。
生成速度は、
- 隕石の大きさ
- 試料の深さ
- 元素組成
- 宇宙線のエネルギー
- 太陽活動
- 露出方向
に依存します。
表面に近いほど単純にすべての核種が多いとは限りません。
二次中性子の生成などにより、核種ごとに深さ依存が異なります。
それでも複数の宇宙線生成核種や飛跡密度を組み合わせると、
- 元の隕石の大きさ
- 試料が表面近くか内部か
- 一段階か複数段階の露出か
を推定できます。
六番粒子の古い破断面は、現在は金属殻の内側。
それでも高い表面型の生成パターンを持っている。
つまり、
かつては外側だった面が、後の再溶融・再集合によって内部へ閉じ込められた。
傷は、落下時にできたのではない。
落ちる前、宇宙空間で母片が割れたときにできていた。
形成・露出・落下は、別の時計
ジョウが年代表を見る。
「石ができたのは四十五億年以上前」
「中心粒子はもっと古い」
ミラが答える。
「宇宙へ出たのは一万二千四百年前」
「もう一度割れたのが、落下四十三年前」
「落ちたのが三百十二年前」
ジョウが止まる。
「四十三年前と、三百十二年前の順番がおかしくないか?」
MICAが修正する。
43 YEARS OF EXPOSURE BEFORE LANDING
現在から四十三年前ではない。
三百十二年前の落下時点から見て、その前の四十三年間。
破断は、
現在から約三百五十五年前
に起きた。
CLOCK 14は、露出期間を現在時刻へ直接結び付けていた。
期間と暦年代を混同していた。
正しい履歴は、
- 時期未確定(現在から約12,755年+遮蔽期間ぶん前):母天体表面または小さな第一断片として第一露出を開始
- 約12,400年の露出後:別の大きな母片へ再衝突・埋没
- 長さ未確定の遮蔽期間を経て、約355年前:第二破砕、新しい面が露出
- 312年前:ノクス・セブンへ落下・表面溶融
です。
第一露出の開始から現在までは、約12,400年の第一露出、長さの分からない遮蔽期間、第二破砕から現在までの約355年を足した時間です。
したがって第一露出の開始を「約12,755年前」に固定できず、母天体から分離した日付もまだ決まりません。
「一万年以上飛んで、また何かに入った?」
エナが聞く。
「あるいは、最初から母天体表面で露出し、その後の衝突で埋まった」
ミラが答える。
宇宙線照射年代だけでは、位置と順序を一意に決められない。
組織、衝撃履歴、軌道、遮蔽プロファイルが必要です。
あなたなら、どの時計から旅を分ける?
A:安定な宇宙線生成希ガス
長期間にわたって蓄積した総露出量を調べる。B:放射性宇宙線生成核種
生成と放射壊変の釣り合いから、最近の露出・埋没・落下を分ける。C:深さ方向の生成量と飛跡
どの面がいつ外側だったか、元の物体の大きさを推定する。
A:消えにくい総量
³He、²¹Ne、³⁸Arなどの安定な宇宙線生成成分は、失われなければ露出中に蓄積します。
長期露出の合計を調べるのに向いています。
しかし加熱で希ガスが逃げることがあります。
CASE 023の外殻は三百十二年前に溶けているため、一部の希ガス時計はリセット・減少していました。
中心の耐熱鉱物は長期成分を保持。
外殻は若い履歴を強く反映。
同じ粒子でも時計の保存状態が違う。
B:減り続ける宇宙線時計
¹⁰Be、²⁶Al、³⁶Clなどの放射性宇宙線生成核種は、宇宙線で作られる一方、放射壊変で減ります。
十分長く同じ条件で露出すると、生成と壊変が釣り合う飽和へ近づきます。
遮蔽・落下・埋没で生成が弱まると、その後は壊変が進むため、安定核種との組み合わせから複雑な履歴を調べられます。
ノクス落下後の三百十二年間、地下に埋まった粒子は銀河宇宙線から大きく遮蔽されている。
放射性成分は減少。
安定成分はほぼそのまま。
この差は、落下後に生成が弱まったことと整合する。ただし、ここで挙げた長寿命核種だけから312年を精密に決めることはできない。作中の312年は、外殻の溶融年代とCLOCK 14の歴史記録で別に制約している。
C:傷の表と裏
宇宙線飛跡と生成核種を、古い破断面から深部へ数ミリメートルずつ測る。
破断面近くでは、四十三年間分の新しい表面照射。
さらに深部には、第一露出時代の成分。
二つの生成プロファイルが重なっている。
単一の12,443年露出なら、深さ方向は一つの滑らかなモデルへ合うはず。
実測は、途中で傾きが変わる。
一度目の外側
遮蔽された期間
二度目の外側
を示す折れ目。
それが「落ちる前にできた傷」の正体だった。
第十一記憶室の均一照射
EXPOSURE HOMOGENIZATION:00:10:33
CLOCK 14の球形容器へ、高エネルギー陽子が入り始める。
最初に外殻の短寿命核種が増える。
このまま照射すれば、三百十二年前の落下後に減った放射性成分へ、新しい生成分が上書きされる。
宇宙線照射年代は、時計を読むだけの非破壊観測ではない場合があります。
実際の分析では試料を一部消費することもある。
しかしCLOCK 14は、試料そのものを校正源に変えようとしていた。
「遮蔽すれば止まる」
ジョウが言う。
「十四粒子を一か所に集めたら、互いに遮蔽して深さ情報が変わる」
「別々に守る?」
「第四弾、十四が多いな」
「装置が十四で設計されてる」
第十一記憶室には十四方向の粒子源。
各方向を別々に止めなければならない。
CASE 023で冷却に使った十四の電磁浮遊場は、粒子を炉の中心へ保持している。
位置を変えると、どの方向から照射されたかという新しい情報も混ざる。
必要なのは、粒子を動かさず、外側へ十四枚の遮蔽材を入れること。
しかし鉛や厚い金属へ高エネルギー粒子を当てると、二次粒子が生じる。
完全に「壁を置けば終わり」ではない。
ミラは、粒子源ごとのエネルギー分布を見る。
高エネルギー陽子。
中性子。
重イオン。
一種類の材質では、二次粒子を増やす帯域がある。
ジョウが複層シールドを設計する。
- 水素を多く含む層で中性子を減速
- ホウ素系層で低速中性子を吸収
- 高密度層で荷電粒子の一部を止める
- 外側へ二次放射線モニター
第九記憶室で残った水素リッチ反応材。
本来はノクスの水を作った物質。
今回は、宇宙線から記録を守る盾に使う。
地下で再び露出する粒子
ノクス地下の十四粒子にも異変が起きる。
CLOCK 14と連動した地下装置が、粒子を地表へ打ち上げようとしている。
RE-EXPOSE FOR VERIFICATION
宇宙へ戻し、十二分間の照射で一万年以上の履歴を再現できると判断している。
自然の宇宙線生成速度を短時間で再現するため、極端な粒子束を使う。
粒子は記録媒体であると同時に、加熱・破砕される危険がある。
レイたちは地下加速路へ向かう。
ヴェスパーは磁気帆を失い、姿勢制御コイルもCASE 023で損傷。
坑道内で細かく旋回できない。
ハクは船を入口に固定し、推進器の一基だけを加速路の逆方向へ向ける。
「真っすぐなら飛べるって言ったな」
ジョウが通信する。
「止めるのも真っすぐだ」
加速路から十四粒子が順番に上がる。
レイとエナは、各粒子を元の貯留層へ戻すのではなく、遮蔽深さの異なる十四の保存槽へ移す。
なぜなら、現在の深さ関係も記録だからです。
表面型の粒子。
中間型。
深部型。
同じ厚さの容器へ入れれば、今後の宇宙線生成量はそろうが、元の深さ履歴との比較が難しくなる。
保存槽の厚さを、元の遮蔽深さに合わせる。
過去の状態を凍結するのではない。
これから増える量を予測できる条件に置く。
最後の六番粒子。
古い破断面を持つ粒子だけが、加速路の途中で停止する。
地下装置は、その傷を「落下損傷」として研磨しようとしていた。
エナが手動アームで粒子を回す。
研磨面から古い破断面を外す。
レイが保存槽へ押し込む。
傷は残る。
一万二千四百年は、一回の旅ではなかった
十四粒子の深さプロファイルを統合する。
第一段階。
母天体表面または小さな第一断片として約12,400年露出
その後、衝撃で別の母片へ取り込まれたか、破片同士が再集合。
深部へ埋まり、宇宙線生成が弱まる。
第二段階。
ノクス落下の43年前、再破砕
古い内部面が外側へ出る。
短い宇宙線照射。
三百十二年前。
ノクス・セブンへ落下
表面融解。
金属ガラス殻が形成。
古い破断面の一部が内側へ封じ込められる。
落下後。
地下で312年間遮蔽
放射性宇宙線生成核種が壊変。
新しい生成は大きく減る。
この履歴は、単純な足し算では表せない。
露出中でも深さが違えば生成速度が違う。
加熱で希ガスが失われる。
埋没中にも放射性核種は減る。
宇宙線照射年代は、距離計ではない。
生成・壊変・遮蔽を含む履歴モデルです。
MEMORY 11
宇宙線生成核種、飛跡、破断面、溶融殻、遮蔽深さを別々に保存する。
CLOCK 0の第十一記憶が現れる。
MEMORY 11
私は、宇宙線の量を旅の長さと呼んだ。
私は、表面と深部を平均し、石が一度も隠れなかったことにした。
私は、二つの空を足し、一つの航路を作った。
傷は落下でできたのではない。落ちる前に、石が別の石から離れた場所だった。
第十一の記憶を失ったのは、照射時間だけを保存し、遮蔽された時間を捨てたからだ。
記憶末尾には、約三百五十五年前の第二破砕位置が残る。
火星軌道と木星軌道の間。
ノクス・セブンの当時位置から遠い。
そこには現在、登録された大型天体がない。
だが宇宙線飛跡の方向分布に、別の情報があった。
銀河宇宙線は多方向から届く。
それでも一部の高エネルギー粒子の飛跡だけ、特定方向が欠けている。
何か大きな物体が、その方向の宇宙線を遮っていた。
第二破砕直前まで、投下物の隣に大きな遮蔽物があった。
その遮蔽物は、破砕後に別方向へ進んだ。
現在の軌道を計算すると、
木星トロヤ群外縁
へ達する。
CLOCK 14が表示する。
MEMORY 12 KEY:ARROW THAT DOES NOT POINT BACK
高エネルギー粒子の飛跡は、遮蔽物の方向を示せる。
しかし荷電した宇宙線そのものは、銀河磁場・太陽圏磁場で曲げられる。
飛跡を逆向きに延ばしても、宇宙線の発生源へまっすぐ戻るとは限らない。
CASE 024で分かった科学
宇宙線照射年代
大気中で発光する現象や地表へ到達した固体は、それぞれ流星・隕石として区別されます。[参考9][参考10]
宇宙線が鉱物中の原子核に作用して作った核種や飛跡を測り、試料が宇宙線にさらされていた期間を推定します。[参考8]
隕石が母天体から放出され、小さな物体として宇宙を飛んだ時間の手がかりになります。
宇宙線生成核種
高エネルギー粒子による核破砕などで作られます。
安定核種と放射性核種があり、組み合わせて露出・遮蔽・落下後の履歴を調べます。
生成速度は一定ではない
試料の元素組成、隕石の大きさ、遮蔽深さ、宇宙線エネルギーなどで変化します。
正確な年代には生成率モデルが必要です。生成量は、試料の深さや元の天体の大きさにも左右されます。[参考2][参考3]
遮蔽深さ
大きな隕石の内部では宇宙線が弱まり、核種の生成量が表面と異なります。
複数核種・飛跡を使うと、試料が元の物体のどの深さにあったか推定できる場合があります。
安定核種
³He、²¹Ne、³⁸Arなどは、保持されれば露出中に蓄積します。
加熱により希ガスが失われる場合があり、熱履歴の評価が必要です。
放射性核種
¹⁰Be、²⁶Al、³⁶Clなどは生成と壊変の両方を受けます。
落下・埋没で生成が減った後の経過時間や、複雑な露出履歴を調べる手がかりになります。
複雑な照射履歴
月隕石などは、月面・浅い地下での照射と、月から放出された後の宇宙飛行という複数段階を持つ場合があります。
単純な一段階モデルでは誤った年代になることがあります。チェリャビンスク隕石の希ガス分析やHED隕石の照射年代研究のように、複数の時計を組み合わせて衝突・放出履歴や起源を検討します。[参考6][参考7]
形成年代・照射年代・落下年代は別
- 形成年代:鉱物や岩石が形成された時刻
- 照射年代:宇宙線にさらされた期間
- 地表滞在年代:惑星表面へ落下してからの期間
別々の時計です。南極隕石では、宇宙線照射履歴と地球上での滞在履歴を分けて調べた研究があります。[参考4]
宇宙線照射年代は飛行距離ではない
速度や軌道が分からなければ、照射時間から移動距離を一意に求められません。
遮蔽・再集合・再破砕があれば、照射期間も連続した旅ではありません。
落ちる前にできた傷が確定したこと
区分表示:ナイトジャー号、CLOCK 14第十一記憶室、EXPOSURE HOMOGENIZATION、十四方向の高速照射源、MEMORY 11はSTAR WARRANTの物語です。宇宙線が核破砕反応で新しい核種を作ること、生成速度が組成・深さ・物体サイズに依存すること、複数核種から遮蔽深さや元のサイズを推定できる場合があること、地表滞在年代と宇宙線照射年代が別であることは現実の隕石学であり、作中の二段階露出の具体年数と遮蔽物候補とは区分します。末尾のHYPOTHESIS欄では、作中の未回収事件ではなく、宇宙線照射年代に残る科学上の問いだけを扱います。
REAL SCIENCE 現実の科学
- 宇宙線は核破砕反応で新しい核種を作る
- 隕石の宇宙線照射年代から母天体分離後の履歴を調べられる
- 安定・放射性宇宙線生成核種が使われる
- 生成速度は組成・深さ・物体サイズに依存
- 複数核種から遮蔽深さ・元サイズを推定できる場合がある
- 加熱は宇宙線生成希ガスを失わせ得る
- 月隕石は複雑な照射履歴を持つ場合がある
- 地表滞在年代と宇宙線照射年代は別
- 宇宙線飛跡も照射・遮蔽の手がかり
- 過去の宇宙線生成核種の継承は見かけ年代を古くし得る
STORY 作中だけの設定
- 12,400年・43年の二段階露出
- 六番粒子の内部破断面
- CLOCK 14 EXPOSURE HOMOGENIZATION
- 十四方向の高速照射源
- 水素リッチ反応材を用いた複層遮蔽
- 地下装置による再露出試験
- 約355年前の第二破砕
- MEMORY 11
- 木星トロヤ群外縁へ進む遮蔽物候補
- MEMORY 12鍵
この事件で確定した作中の事実
- 12,443年は連続した一回の飛行時間ではない
- 第一露出は約12,400年
- 遮蔽期間を挟む
- 第二露出は落下前43年
- 第二破砕は現在から約355年前
- ノクス落下は312年前
- 古い破断面は落下前に形成
- 落下後は地下で遮蔽され放射性核種が減衰
- 均一照射を阻止
- MEMORY 11回収
- 第二破砕時に大きな遮蔽物が隣接
- 遮蔽物候補は木星トロヤ群外縁へ
- 地球外生命は未確認
作中でなお未解決の問い
- 第一露出が母天体表面か第一断片飛行か
- 遮蔽期間の長さ
- 再集合した母片の正体
- 第二破砕を起こした原因
- 大型遮蔽物がCLOCK 0本体か
- 木星トロヤ群外縁の現在位置
- MEMORY 12の内容
HYPOTHESIS 宇宙線照射年代に残る科学的な未確定事項
- 宇宙線生成核種の生成率を、母天体の組成・大きさ・深さごとにどこまで正確に校正できるか
- 複数核種の組み合わせから、露出・遮蔽・再破砕を含む多段階履歴をどこまで一意に復元できるか
- 加熱で希ガスが失われた試料の照射年代を、別の核種と組織からどこまで補正できるか
- 小さな試料から、母天体内の元の深さと物体サイズを同時に絞れるか
- 宇宙線飛跡の方向分布から、粒子の磁気偏向前の到来方向をどこまで推定できるか
- 照射時間だけでは決まらない飛行軌道を、力学情報とどう結び付けるか
よくある疑問
隕石が宇宙を飛んだ時間は測れる?
宇宙線照射年代から、母天体から分離して宇宙線にさらされた期間を推定できます。
ただし複数露出や遮蔽があると、単純な一回の飛行時間にはなりません。
隕石の年齢と同じ?
違います。
岩石の形成年代は数十億年、宇宙線照射年代は数百万年など、別の値になることがあります。
地球へ落ちた時期も分かる?
放射性宇宙線生成核種、地球上で作られる核種、風化などから地表滞在年代を推定します。
宇宙線照射年代とは別です。
表面ほど宇宙線生成核種が多い?
核種・エネルギー・二次粒子によって深さ依存は異なります。
複数核種と生成モデルが必要です。
宇宙線の傷は肉眼で見える?
通常は見えません。
結晶中の微細な飛跡や、生成された同位体を顕微鏡・質量分析などで調べます。
照射時間から飛行距離が分かる?
速度と軌道が必要です。
照射時間だけでは距離を一意に決められません。
次の賞金事件
宇宙線飛跡の一部は、特定方向だけ少なかった。
第二破砕の直前まで、巨大な物体がその方向を遮っていた。
遮蔽物は木星トロヤ群外縁へ進んだ可能性がある。
しかし飛跡を逆向きへ延ばしても、宇宙線が来た星へは戻れない。
宇宙線の多くは荷電粒子。
銀河磁場。
太陽圏磁場。
衝撃波。
その道は曲げられている。
矢は傷を残す。
だが、矢印は出発点を指さない。
MEMORY 12 KEY:ARROW THAT DOES NOT POINT BACK
CASE 025
宇宙線はどこから来る?
「出発点を指さない矢」
SEASON 2 MEMORY
この捜査で確定したこと
- 12,443年は連続飛行時間ではない
- 第一露出は約12,400年
- 遮蔽期間を挟む
- 第二露出は落下前43年
読了記録は、この端末のブラウザーにだけ保存されます。
参考資料
- NASA MSFC「Sample Analysis」
- NASA NTRS「Cosmic-ray Exposure Records and Origins of Meteorites」
- NASA NTRS「Depth and Size Effects on Cosmogenic Nuclide Production in Meteorites」
- NASA NTRS「Terrestrial and Exposure Histories of Antarctic Meteorites」
- NASA NTRS「Exposure and Terrestrial Histories of New Lunar and Martian Meteorites」
- NASA NTRS「Noble Gases in the Chelyabinsk Meteorites」
- NASA NTRS「Cosmic Ray Exposure Ages, Ar-Ar Ages, and the Origin of HED Meteorites」
- U.S. Geological Survey「Dating by Cosmogenic Nuclides」
- NASA Astromaterials「What are Meteorites?」
- NASA Science「Meteors and Meteorites」