科学証拠ファイル SW-EV-04 / 担当: MICA-13
軌道とは? 高さと速さで決まる宇宙の通り道
PR: このページには広告(商品リンク)を含みます。
先に結論
軌道とは、天体や人工衛星が重力に引かれながら描く通り道です。同じ天体を回る円軌道では、高度・速さ・一周の時間がセットで決まり、低い軌道ほど速く回ります。楕円軌道では高度だけで速さを決められないため、近地点・遠地点と速度の向きも合わせて読みます。[参考1][参考2]
MICA-13 船載AI 補足します。軌道は停止を許可しません。では、速度を失った構造物はどうなるのか——この回答は、CASE 004 の捜査資料に含まれます。
円軌道は「高さ」を選ぶと「速さ」が決まる
軌道上の物体は、重力から自由になったわけではありません。地球に引かれ続けたまま、決まった通り道を回っています。それなのになぜ落ちてこないのか——この疑問の本回答は、このファイルでは扱いません。人工衛星はなぜ落ちないのかを追う CASE 004「落下を続ける監獄」が所有する謎です。
ここでは、まず円に近い地球周回軌道を比べます。国際宇宙ステーション(ISS)は高度約400kmを秒速約7.7kmで飛び、約90分で地球を一周します。1日に約16周です。[参考3] 一方、静止軌道の気象衛星は高度約36,000kmを、23時間56分かけて一周します。同じ天体を回る円軌道なら、低いほど速く一周は短く、高いほどゆっくりで一周は長くなります。[参考1][参考2]
高度・速度・周期は、別々に選べない
円軌道では、高さを決めると、その高さで円を保つ速さが決まり、一周の時間も決まります。宇宙に積み重なるのは、「速く回る低い円」と「ゆっくり回る高い円」です。ただし楕円軌道では、高度だけから速さを一つに決められません。どの楕円軌道にいるかを示す近地点・遠地点が必要です。同じ楕円上で同じ高度を通る往路と復路では、速さの大きさは同じでも速度の向きが異なります。
高度・速度・周期は、三つの独立したつまみではなく、かみ合った三枚の歯車のようなものです。一枚を回せば他も動きます。ただし、この比喩がそのまま使えるのは同じ中心天体を回る円軌道の比較です。楕円軌道や、月・太陽など複数天体の重力が効く場面では、現在位置と速度の向きまで必要です。
代表的な軌道の種類と使い分け
| 軌道 | 高度の目安 | 一周の時間 | 主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 低軌道(LEO) | 〜約2,000km | 約90〜120分 | 国際宇宙ステーション、地球観測衛星 |
| 中軌道(MEO) | 約2,000〜36,000km | GPS で約12時間 | GPS などの測位衛星 |
| 静止軌道(GEO) | 約36,000km | 23時間56分(地球の自転と同じ) | 気象衛星ひまわり、通信・放送衛星 |
| 極軌道・太陽同期軌道 | 低軌道の一種 | 約90〜100分 | 地球全体の観測 |
高度・周期・用途の目安はJAXAとNASAの軌道資料に基づきます。[参考1][参考2]
静止軌道が「止まって見える」仕組み
静止軌道の衛星は、止まっているわけではありません。地球の自転とちょうど同じ周期で赤道の上空を回っているため、地上から見ると空の同じ位置に留まって見えます。アンテナを固定したまま使えるので、放送や気象観測に向いています。
極軌道は、縦に回って地球全体を見る
極軌道は北極と南極の上空を通る、縦回りの軌道です。衛星が縦に回る間に地球が横に自転するので、地表のほぼ全体を順番に見下ろせます。太陽同期軌道はその代表で、NASA の観測衛星 Aqua は高度約705kmを約99分で一周しながら観測を続けています。[参考2]
遠地点・近地点 — 楕円軌道の読み方
軌道は完全な円とは限りません。多くはわずかにつぶれた楕円で、地球に最も近づく点を近地点、最も遠ざかる点を遠地点と呼びます。速度は一定ではなく、近地点の付近で最も速く、遠地点の付近で最もゆっくりになります。
円に近い軌道では、二つの点の差はごくわずかです。逆に楕円を強くすると、遠地点側の空に長く留まる軌道を作れます。高緯度地域向けの通信に使われてきたモルニヤ軌道はその代表です。
軌道を変えるときも、この二つの点が基準になります。同じ噴射でも、どの地点で行うかによって軌道の変わり方が違うからです。CASE 004 では、下がりすぎた近地点をどう引き上げるかが、そのまま残り時間の計算になりました。
事件で軌道はどう使われたか
CASE 004 の舞台は、地球低軌道の更生拘置環《ケストレル》。無人施設あつかいで最終降下命令が出た構造物に、まだ人が残っている——という事件でした。軌道の高さの読みが、そのまま救助の制限時間になります。捜査の全記録は、前述の CASE 004「落下を続ける監獄」にあります。
軌道の計算を担当したのは船載AIのMICA-13です。来歴と未回収の謎は、13分の記憶を失った旧式船載AI・MICA-13 の人物記録にまとまっています。
STORY 作中だけの設定
- 更生拘置環《ケストレル》は、2319年を舞台にした作中だけの施設です
- 現実の地球低軌道に、収容施設は存在しません
MICA-13 船載AI 警告。本ファイルの数値は現在の地球周回軌道のものです。2319年の航行計画には使用しないでください。……この警告が不要であることは、認識しています。
EVIDENCE IN ACTION
この証拠が事件を動かした瞬間
CASE 004の捜査記録を読む《ケストレル》は地球から最も遠い場所へ近づいていた。軌道上では、この付近が最も遅い。
だからこそ、ここで前向きに速度を足す。反対側の近地点を、大気の濃い場所から引き上げるために。
このファイルが扱わないこと
「人工衛星はなぜ落ちないのか」への本回答は、CASE 004 に譲ります。ここでは導入以上のことを書きません。また、地球軌道の環境は星系記録「地球軌道」が受け持ちます。スペースデブリの実態や作中施設の配置は、そちらに整理しました。
落ち続ける軌道をめぐる、よくある疑問
静止衛星は、本当に静止しているのですか?
静止していません。地球の自転と同じ周期で回り続けているため、地上から見ると止まって見えるだけです。「静止」は地上から見た呼び名で、衛星自身は高速で移動しています。
軌道は一度乗れば、ずっとそのままですか?
低い軌道ではごくわずかに大気が残っていて、その抵抗で少しずつ高度が下がります。ISSが高度を保つ運用を続けているのはこのためです。高い軌道ほど大気の影響は小さくなります。[参考4]
遠地点・近地点は、どの軌道にもあるのですか?
完全な円軌道なら地球からの距離はどこでも同じで、二つの点を区別する意味はほぼありません。楕円軌道でははっきり現れ、楕円が強いほど差が大きくなります。この「つぶれ具合」を表す数値が離心率です。
最後に、軌道は一点ではなく一組で読む
衛星の高さだけを見て用途や危険を決めず、速度、周期、近地点・遠地点を一組で確認します。「なぜ落ちないのか」を知りたい場合は、この数値の読み方を持ってCASE 004「落下を続ける監獄」へ進んでください。
捜査を続けるための資料
このファイルのテーマを、現実の資料でさらに追いたい人向けの一冊です。ほかのテーマの本と観測装備は 捜査資料庫にまとめています。