科学証拠ファイル SW-EV-03 / 担当: ジョウ・カナタ

レゴリスとは? 月の砂が証拠になる理由

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レゴリスとは、天体の表面を覆う細かく砕けた岩石や塵の層です。月では微小隕石の衝突が岩を砕き続け、風や水の浸食がないため、粒は鋭いまま残ります。帯電して機器や宇宙服へ付着し、吸い込むと目・鼻・喉を刺激します。長期曝露による健康影響は、まだ研究中です。

このファイルでいうレゴリスは、天体の表面を覆う細かく砕けた岩石や塵の層を指します。

ジョウ・カナタ 機関士

月の砂は、削りたての金属粉と同じ扱いだ。素手で触らない、吸わない、機械に入れない。整備士は理屈より先に、手袋の破れ方で覚える。

月の砂は、風ではなく衝突が作った

地球の砂は、風や川が長い時間をかけて岩を転がし、角を取りながら細かくしたものです。月には大気も流れる水もありません。代わりに、微小隕石と呼ばれる小さな粒が何十億年も表面をたたき続け、岩を砕いてきました。太陽から飛んでくる荷電粒子も、この「絶え間ない攻撃」に加わります。

砕かれた粒は小麦粉のように細かく、それでいて角は立ったままです。角を丸める風も雨も、月にはないからです。

地球の砂と月の砂は、ここが違う

比べる点 地球の砂 月のレゴリス
作られ方 風や水が岩を削る 微小隕石の衝突が岩を砕く
粒の形 転がされて丸い 砕けたままで鋭い
その後 浸食で形が変わり続ける 丸める力がなく、鋭いまま残る

REAL SCIENCE 現実の科学

  • レゴリスは、隕石の衝突などで砕かれた岩片や塵を含む、表面の層です
  • 月には風も流水もないため、粒の角が取れずに残ります
  • 太陽の紫外線や太陽風の影響で帯電し、あらゆる面に付着しやすくなります

機関士がレゴリスを警戒する三つの理由

宇宙服にも機械にも、レゴリスは容赦がありません。アポロ計画の記録には、被害が具体的に残っています。

性質 現場で起こること
鋭い 宇宙服のブーツや試料容器の真空シールを削り、機構を詰まらせる
帯電する こすった風船に髪が引かれるように張り付き、払っても落ちない
細かい 船内に持ち込まれ、目・鼻・喉を刺激する

アポロ17号では、船内に持ち込まれた塵で飛行士が目や喉の刺激を訴えました。くしゃみや鼻づまりが続くこの症状は「月の花粉症」と呼ばれています。長期間吸い込んだ場合に肺で何が起こるかは、まだ全部は分かっていません。だからこそ、月に長く滞在する計画では塵対策が真剣に研究されています。

厄介者は、資源にもなる

同じ性質を逆手に取る研究も進んでいます。NASAはレゴリスを加熱して焼き固め、着陸パッドや道路、居住区の基礎にする建設技術を開発中です。レゴリスから酸素や金属を取り出す資源利用の研究もあります。現地の砂を使えるなら、地球から運ぶ資材を減らせるからです。どれもまだ研究段階で、実験の多くは月の砂を再現した模擬砂で行われています。

事件でレゴリスはどう働いたか

CASE 003 の現場は、月面基地 TYCHO-4 でした。整備士がひとり失踪し、残されていたのは月面の足跡だけ。レゴリスの上の足跡は風で消えないため、「いつ、誰が付けたのか」が捜査の分かれ目になりました。

足跡がなぜ消えにくいのか、何年残るのか。その疑問はCASE 003「歩いていない失踪者」の捜査記録が所有しています。このファイルが扱うのは、足跡を保存した「紙」にあたるレゴリスの性質だけです。

STORY 作中だけの設定

TYCHO-4 とその地下アーカイブは、2319年を舞台にした作中だけの施設です。現実の月に、人が常駐する基地はまだありません。

ジョウ・カナタ 機関士

あの現場で信用できたのは、消えない砂の記録だけだった。冗談のひとつも言いたかったが、出てこなかったよ。

EVIDENCE IN ACTION

この証拠が事件を動かした瞬間

穴から飛び散った灰色の物質が、二つの足跡の縁に薄く重なっている。

衝突の発生は十九か月前。「少なくとも、この足跡は今朝のものじゃない」

CASE 003の捜査記録を読む

このファイルが扱わないこと

月の重力や大きさ、温度といった天体そのもののデータは、星系記録の月 — 足跡が残り続ける灰色の法廷にまとめています。足跡の持続年数や消え方の疑問も、前述のとおり CASE 003 に譲ります。ここに残すのは、砂そのものの性質だけです。

月の砂と痕跡をめぐる、よくある疑問

レゴリスは月にしかないのですか?

いいえ。レゴリスは天体の表面を覆う砕けた層を指す言葉で、火星や小惑星の表面にもあります。月のレゴリスが特に細かく鋭いのは、大気がなく、微小隕石の衝突が地表に直接届き続けるためです。

月の砂に触れると、どうなりますか?

鋭く帯電した粒が張り付くため、皮膚や呼吸器への接触を避ける対策が必要です。アポロ計画の飛行士は、船内へ入った塵による目・鼻・喉の刺激を報告しました。長く吸い込んだ場合の影響は、現在も研究が続いています。

レゴリスで建物を作れますか?

まだ研究段階ですが、方向としては本気で検討されています。レゴリスを焼き固めて着陸パッドや道路にする技術や、酸素・金属を取り出す研究を NASA などが進めています。地球から資材を運ばずに済むことが、月開発では大きな価値になるためです。

捜査を続けるための資料

このファイルのテーマを、現実の資料でさらに追いたい人向けの一冊です。ほかのテーマの本と観測装備は 捜査資料庫にまとめています。

参考資料

  1. NASA「Moon Dust」 月の塵の成り立ち・帯電・アポロ17号の健康影響の確認(確認日: 2026年8月11日)
  2. NASA「What Hazards Are Caused by Lunar Regolith?」 粒が鋭いまま残る理由と機器・人体への危険性の確認(確認日: 2026年8月11日)
  3. NASA「Lunar Surface Technology」 レゴリスの建材利用・資源利用研究の確認(確認日: 2026年7月30日)

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