星系記録 / 作中の宙域・施設
BH-13 — 昨日が届く超大質量ブラックホール宙域
BH-13はSTAR WARRANTの作中にだけ存在する超大質量ブラックホール宙域です。質量は太陽の約430万倍という設定で、強い重力が光の通り道を曲げ、映像を赤方偏移させます。CASE 006では遅れて届く映像、CASE 007では外縁を漂う救難ポッドが事件現場になりました。現実の天体名ではありません。
光が曲がり、「今」が信用できなくなる宙域
BH-13 は、現実の星表に対応する天体を持たない作中だけの宙域です。中心にあるのは、太陽の約430万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール。活動性は低く、厚く明るい降着円盤はありません。見えるのは薄いガスと弱い光の輪、そして背景の星々だけ。作中でも指折りの、静かな圏域として描かれます。
静かなのに、観測者にとってはもっとも油断できない場所です。強い重力は、光の通り道そのものを曲げます。同じ物体が空の複数の位置に現れる原因です。しかも光路ごとに道のりが違うため、それぞれの像が示すのは違う過去。作中の観測条件では、回り込みの像は直接像より十数分から二十数分遅れる設定です。見えている場所と実在の位置、見えている「今」と実際の今が食い違う。なお、ブラックホールという天体そのものの構造や観測方法は、証拠ファイル「ブラックホールとは? 構造・種類・観測方法」が扱います。
ミラ・ヴォス 天体物理担当 映像は嘘をつかない。でも、光路を無視した解釈は嘘になる。まず、その光がどの道を通ってきたかを確認する。
この宙域だから、「昨日から届いた映像」が事件になった
三年前、重力観測船《オルフェウス》が BH-13 観測圏で消息を絶ちました。その船が送った映像が、三年遅れで地球圏に届き始めます。送信側では等間隔だったはずの映像が、受信側では27時間、41時間と間隔を広げていました。後の映像ほど赤く、暗い。さらに映像の中では、同じ人物が空の三か所に同時に写っています。
遅延、間隔の伸び、赤方偏移、多重像。どれも、この宙域の性質が作り出した「証拠の歪み」です。歪みを一枚ずつ剥がし、映像の本当の時系列を復元していく捜査は、事件ファイル「ブラックホールに落ちるとどうなる? CASE 006「昨日から届いた映像」」で描かれます。ブラックホールに落ちる物体がどうなるのか、外からどう見えるのかという疑問への回答も、同じ事件ファイルが所有します。
外縁へ離れると、次に問題になるのは重力だけではなく熱です。三年間漂った救難ポッドN-7が凍らず、片側だけ焼けていた理由は、CASE 007「凍らない遺体」で追います。
BH-13 に置かれた作中の施設
STORY 作中だけの設定
- 重力観測船《オルフェウス》 — BH-13 観測圏に配置されていた研究船。公式記録では三年前、乗員を乗せたまま BH-13 へ落下したとされる。この公式記録の真偽こそが、CASE 006 の捜査対象になった。
- 近傍観測環《パララックス13》 — 十三枚の薄い受信鏡を環状に並べた無人観測施設。《オルフェウス》の原記録を保管する。BH-13 の重力レンズの影響で、施設自体が複数の位置に見えることがある。
- 救難ポッドN-7 — BH-13外縁を三年間漂った一人用ポッド。CASE 007で、熱制御記録と第七証言の回収対象になった。
- 航路 — ラグランジュ・ゲート経由で外縁部まで到達できる。ただしゲートは船や物体の移動に使えるだけで、電波を常時中継しない。BH-13 発の映像や信号は、通常空間を光の速さで進むしかない。
現実ではここまで分かっている — 撮影された超大質量ブラックホール
BH-13 は創作ですが、超大質量ブラックホール自体は現実に観測されています。
REAL SCIENCE 現実の科学
- 2019年、国際観測プロジェクト EHT(イベント・ホライズン・テレスコープ)が、M87銀河中心のブラックホールの撮影に史上初めて成功しました。地球から5500万光年の距離にあり、質量は太陽の約65億倍です。
- 2022年には、天の川銀河の中心にある「いて座A*(エースター)」の撮影にも成功しました。距離は約2万7000光年、質量は太陽の約400万倍です。
- EHT は、地球上の8つの電波望遠鏡をつないで地球サイズの仮想望遠鏡を作る観測網です。
作中の BH-13 の質量設定(約430万太陽質量)は、いて座A* とほぼ同じ規模です。静かな影と細い光の輪だけが見えるという BH-13 の姿も、現実の観測画像が示した姿を下敷きにしています。創作の宙域は、現実の観測のすぐ隣に置かれています。