科学証拠ファイル SW-EV-08 / 担当: MICA-13

光行時間とは? 宇宙の通信が遅れる理由

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先に結論

光行時間とは、光や電波がある距離を進むのに必要な時間です。月から地球までは約1.3秒、太陽から地球までは約8分、地球と火星の間は互いの位置により片道約3〜22分かかります。これは時計の進み方が変わる「時間の遅れ」ではなく、信号の移動時間です。[参考1][参考2]

MICA-13 船載AI

「いま届いた」は、「いま起きた」を意味しません。……この訂正が不要になる日は、まだ来ていません。距離を引いてください。

光は速い。それでも宇宙の距離には時間がかかる

光は1秒に約30万km進みます。地上では、照明を点けてから光が届くまでの差をほとんど感じません。天体間では距離が大きいため、その遅れを無視できなくなります。

区間 片道の光行時間の目安
月 → 地球 約1.3秒
太陽 → 地球 約8分
地球 ↔ 火星 約3〜22分

地球と火星の距離は、二つの惑星が太陽を回る位置によって変わります。そのため、通信遅延も一定ではありません。地球から指示を送り、その返答を受け取るまでには、片道時間が二度かかります。

地球と火星のやり取りは、電話より往復書簡に近いと考えるとテンポをつかめます。ただし遅い理由は、電波がのんびり進むからではありません。電波は光速で進んでも、渡る距離が大きいため返事まで数十分かかる、という比喩の限界を忘れないでください。[参考2]

REAL SCIENCE 現実の科学

  • 電波も光と同じ電磁波で、真空中を光速で進みます
  • 通信遅延は距離で決まり、遠いほど長くなります
  • 光行時間は「時計そのものの進み方が変わる現象」ではありません

夜空を見ることは、少し前の姿を見ること

月から届く光は約1.3秒前、太陽から届く光は約8分前に、それぞれの天体を離れています。さらに遠い恒星は、何年、何百年も前の姿として見えます。

「光年」は時間ではなく、光が1年間に進む距離の単位です。遠い天体ほど古い光を受け取るため、望遠鏡は遠くを見る装置であると同時に、過去を見る装置でもあります。

深宇宙では、返事を待たずに動く

火星の探査機へ送った指示は、すぐには届きません。探査機からの返答にも、同じ規模の時間がかかります。危険が起きるたびに地球へ判断を仰いでいては、間に合わない場面があります。

そこで探査機には、自分で安全を守る処理や、まとめて届いた指令を順に実行する仕組みが必要です。

NASAの深宇宙通信網(DSN)は、探査ミッションと通信する地上アンテナ網です。英語名はDeep Space Networkです。[参考3] 火星では、地表の探査機から周回機へ通信を渡し、周回機から地球へ送る中継も使われます。[参考2]

事件では「いつ届いたか」を引き算する

CASE 005「二人の容疑者、ひとつの誕生日」では、二種類の遅れを区別します。時計の進み方と通信の遅れを分けなければ、アリバイを正しく比べられません。

CASE 006「昨日から届いた映像」にも同じ原則が働きます。届いた映像は、受信した瞬間の現地を映したものではありません。

時計そのものが経験した時間は、固有時とは何かを整理した証拠ファイルで扱います。このファイルが追うのは、信号が距離を渡るために使った時間だけです。

STORY 作中だけの設定

CASE 005のノアとルカ、CASE 006の受信映像はSTAR WARRANTの物語です。月・太陽・火星の光行時間と、NASAの深宇宙通信運用は現実の観測・運用資料として分けて読んでください。

EVIDENCE IN ACTION

この証拠が事件を動かした瞬間

こちらの問いが船へ届くまで約4時間。返事が戻るまで、さらに約4時間。

今表示されているノアは、ルカの死をまだ知らない。八時間前に記録された定時証言だった。

CASE 005の捜査記録を読む

このファイルが扱わないこと

月の裏側から地球へ直接電波を送れるのか、中継局がなければどうなるのか。その疑問は、CASE 010「沈黙しない中継局」が追います。ここでは、距離による時間差だけを扱います。

宇宙から届く時刻をめぐる、よくある疑問

火星と電話のように会話できますか?

自然なテンポの会話はできません。片道だけで約3〜22分かかり、返事を受け取るまでにはそのほぼ2倍が必要です。短い確認でも、手紙に近いやり取りになります。

光行時間と相対性理論の時間の遅れは同じですか?

違います。光行時間は信号が移動するための時間です。相対論的な時間の遅れは、速度や重力によって時計の進み方そのものが変わる現象です。

遠い星が今は消えている可能性もありますか?

あります。地球に届いているのは、その星を出発した過去の光です。距離が100光年なら、私たちはおよそ100年前の姿を見ています。

最後は受信時刻から引き算する

遠方の出来事を読むときは、「受信した時刻」をそのまま「現地で起きた時刻」にしません。まず距離から光行時間を見積もり、受信時刻から引いてから、時計そのものの進み方を別に検討します。

捜査を続けるための資料

このファイルのテーマを、現実の資料でさらに追いたい人向けの一冊です。ほかのテーマの本と観測装備は 捜査資料庫にまとめています。

参考資料

  1. NASA Science「How Does Webb See Back in Time?」 光速と月まで約1.3秒という光行時間の確認(確認日: 2026年8月11日)
  2. NASA Science「Mars Relay Network」 地球・火星間の距離と片道約3〜22.4分の確認(確認日: 2026年8月11日)
  3. NASA「Deep Space Network」 深宇宙通信網の役割と運用対象の確認(確認日: 2026年8月11日)

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